道徳授業の定石化「いま、ぼくにできること」(2年東書)勤労、公共の精神〔みんなのためにはたらく〕

2025年1月14日

「勤労、公共の精神」って何だ?

「いま、ぼくにできること」のサブタイトルに〔みんなのためにはたらく〕とある。

「3.11」ー東日本大震災で被災した子どもが綴った作文から、「どんな考えから、『ありがとうのしゅくだいは、ぼくが大人になるまでつづきます。』」という答えを導き、「勤労」「公共」の精神を考えさせるというのは、至難の業。二年生に教えるには少し難しい内容だ。

教科書会社の指導計画を見てみる。

1 「働く」という言葉の捉え方の一つを知る。
2 「いま、ぼくに できる こと」を読んで話し合う。
◎「ぼく」はどんな考えから、「ありがとうのしゅくだいは、ぼくが大人になるまでつづきます。」と言っているのでしょう。
3 自分を振り返り、働いてよかったことを話し合う。
○家の仕事、係や当番活動などで、働いてよかったことやうれしかったことは、どんなことですか。
4 勤労、公共の精神について、教師の話を聞く。

「1「働く」という言葉の捉え方の一つを知る」って、どんなことを言ってるの?よくわからない。
もしかすると、

(板書)「働く」

「これは『はたらく』という漢字です。どういう意味か、分かりますか?」

「人が動く、と書いてはたらく。仕事をする、という意味ですが、『傍(はた)』=周りにいる人を『楽』にする、から「はた・らく」と言う人もいます。」

「今日のお話は、東日本大震災で被害に遭った二年生が、『傍(はた)を楽にする』場面が出てきます。それがどこなのか?考えながら聞いて下さい。あらすじは…」

と導入するようなことを表しているのかもしれない。

二重丸がついている「主発問」は、そのまま問いかけたら、よほど賢い子どもがいなければ、答えようがなくて、シーンとなることまちがいないくらい難しい問いだ。

まずは「定石」発問での授業展開を考えてみる。

あらすじ

2011年3月11日、町を大きな地震と津波が襲った。いろいろな物が一瞬でなくなった。水、食べ物、電気、家。当たり前だと思っていたものが、一瞬でなくなってしまった。がれきを片付けてくれた人。水を運んでくれた人。地震の時に一緒に泊まってくれた先生や友達。その時から僕の心の中は、「ありがとう」の気持ちであふれそうなくらい一杯になった。2週間ほどしてから修了式があった日。先生が「春休みの宿題は、一日に一回以上『ありがとう』と言われることです」と言った。(ぼくに何かできることはないだろうか)と考えて、避難生活を送る人のお手伝いをすることに決めた。

定石①「登場人物」「セリフ」「したこと」の確定

「登場人物」 ぼく(赤丸囲み) がれきをかたづけてくれた人 水を運んでくれた人 地震の時に一緒に泊まってくれた人 先生(青丸囲み) 友だち

「セリフ」は①〜⑤ ①先生 ②ぼく ③ぼく ④避難所の人 ⑤家のない人

※登場回数やセリフ、題名から「ぼく」が「中心人物」

ぼくが「したこと」の確認

穴埋め形式。「したこと」「できごと」をパワポなどを使ってテンポ良く確認。

①◯◯◯(つなみ)が町をおそった→◯◯◯◯◯(あたりまえ)と思っていた◯◯(もの)が◯◯◯◯◯(なくなった)。

あらわれたもの→がれきを片付ける◯()水を運ぶ◯() いっしょにとまる◯◯(先生)や◯◯◯◯(ともだち)→◯◯◯◯◯(ありがとう)の気もちでいっぱい。

しゅくだい「一日一回以上『◯◯◯◯◯』(ありがとう)と◯◯◯◯(言われる)こと」→◯◯◯(ひなん)している◯()が気になり、◯◯◯◯◯(お手つだい)をすることにきめた。

④◯◯◯(水くみ)や◯◯◯◯(しょくじ)くばりのお手つだい
「どうぞ」「◯◯◯◯◯(ありがとう)」
→◯◯◯◯◯◯(よろこばれる)→◯◯◯◯(たのしく)なっていた。

→「はたらく」=「傍(はた=周り)の人が楽になる」

⑤大人になったら、◯◯◯◯◯(けんちくか)になって、つなみに強い町を作りたい。

じしんに強い家を作って「◯◯◯◯◯(ありがとう)」と言われるように「◯◯◯◯(はたらく)」こと=「大人になるまでつづく◯◯◯◯◯(しゅくだい)」

定石②中心人物の変換点の検討

発問1「ぼくの考えが変わったのは、どこか。」
→「ありがとう」の気もち=地震の時に先生やともだちと一緒に泊まってから①
→(なにかできることはないだろうか)②
→よろこばれるのがたのしくなっていました。③
→けんちくかになりたい。④

定石③今の自分、未来の自分を選ぶ

発問2「今の自分が働いている時、①ありがとう②何かできることはないか③楽しい④何かになりたい。自分に似ている考えはあるか。それは何番か?」

発問3「これからの自分は、何番のような考え方をもって働いていきたいか。」

発問4「ありがとうのしゅくだいは、ぼくがおとなになるまでつづきます」とは、大人になるまで「◯◯◯◯◯(ありがとう)」と言われる人=「◯◯◯◯(はたらく人」になる=「◯◯◯◯(けんちく)か」になるということ。

まとめ

「ありがとうのしゅくだいは、ぼくが大人になるまでつづきます。」という「ぼく」の考えを導き出す方法として、発問4を考えてみた。

周りの人に「ありがとう」と言われ、「はたらく」気もちが芽生え、建築家になって「ありがとう」といわれる「しごと」をしたいという展開だ。

何も手を打たなければ、子どもたちからは何も出てこない。かなり難しい問いだと思うが、よりいい方法があればぜひ共有させて頂きたい。

道徳の定石化「七つのほし」(東書2年)はこちらから。

道徳授業の定石化「①登場人物の確定」「②変換点の検討」「③今と未来の選択」についてはこちらから。

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