道徳授業の定石化 「しあわせの王子」を定石展開・発問で授業を組み立てる
「しあわせの王子」は「しあわせ」だったか?
「しあわせの王子」のクライマックス場面。マッチ売りの女の子に左目のサファイアを届けるようにつばめに頼み、王子は目が見えなくなる。つばめはその目を羽でそっとなでながら、「心の優しい王子様。わたしはあなたのそばで暮らしましょう。」と言う。
次の日から、つばめは暖かい南の国へ行くこともせず、町の人々に王子の像を覆っていた金を剥がし、町に済む貧しい人たちの元へ届ける。寒い冬になり、力尽きたつばめが白い雪に包まれると、王子とつばめの心は天使に召され、空に上っていった。
王子像建立を命じたのは王様だろう。教科書では「銅像」となっているが、全身が金で覆われている金ぴかの金像。両目にはサファイア。刀剣にはルビーが埋め込まれている。世継ぎだった最愛の王子を若くして失った悲しみを紛らわすためなのか、与えてやることのできなかった宝石や金を使った像を建てさせたのだろうと想像される。
その像は「しあわせの王子」と呼ばれていたが、それは王子の死を悼む尊称ではなく、町の人々の貧しい暮らしに目を向けることなく豪華な金像を建てた王様と王子を揶揄する意味が込められていたのではないか?
町全体が見渡せる場所に銅像となって立った王子は、町の片隅に住む人々が、貧しい暮らしを強いられている事をサファイアの目を通して知る。しかし時すでに遅く、何もできず、立ち尽くすだけだった。
そんなことは物語のどこにも書かれていないが、こうしたことを分かった上で読んだ方が、この話の悲劇性が読者に伝わり、「感動」を呼び起こし、自分を犠牲にして貧しい人を救おうとした王子やつばめの行為に対して「畏敬の念」をもつようになるのではなかろうか。
とは言え、そんなに時間をかけて扱うわけにもいかないので、定石展開で授業を組み立ててみる。
誰が一番幸せか?〜定石展開1⃣
あらすじを伝えてから読み聞かせたあと、登場人物と会話文の話主を確認し、人物評価をする。
定番発問は、①「誰がいい人ですか?」②「誰が一番だめ」③「誰に問題がありますか?」を使うが、「しあわせの王子」だけに、「誰がいい人」ではなく「誰が幸せ」かを問うてみたい。
発問1 誰が幸せか?
この話に出てくる登場人物で幸せな人は誰もいない。
「しあわせの王子」と言われていても、小さいうちに死んで銅像になってしまったのだろうから幸せではない。「つばめ」も、南の国へ行けばいいのに、王子のために働き、天国に召されてしまった。宝石や金を届けてもらった人々も、それは一時しのぎに過ぎず、その後も貧しいまま生活していくことになる。
少し時間を取って班で考えさせ、意見交流をしてから発表させると、こうした物語の悲劇的背景に関する意見も出されるのではないか。子どもたちの意見を拾いながら、教師がまとめてやるといい。
発問2 誰が一番だめか?
物語には出てこないが、貧しい人を見殺しにして金ピカ像を建てている王様が一番だめだ。
発問3 誰に問題があるか。
つばめを道連れにしてしまった王子の行動に問題がある、と感じる子もいるかもしれない。
どこから変わったか?〜定石展開2⃣
発問4 王子が変わったのはどこからか。
つばめが王子の足下に止まり、涙を落とした所が挙がるだろう。
発問5 変わる前はどうだったのか。
町の人々の様子は見えていたが、何もできずに立っていた。
発問6 変わった後はどうなったか。
つばめに頼んで、貧しい人々を助けようとした。
自分はどっち?〜定石展開3⃣
発問7 今の自分は、変わる前の王子、後の王子、どちらに近いか。
前者は「見て見ぬふり」をする「傍観者」であり、後者は「自己犠牲を厭わない」「やむにやまれぬ思いで行動する人」と言える。
発問8 そういう体験はないか。
子どもから出てくると面白い。じっくりと話を聞き取り、言葉が足りないところは教師が補って引き出すと良い。
講話と感想
出てこなければ教師が感動した話でまとめる。良いネタがあればストックしておきたい。
二年生にはやや難しいかもしれないが、こんなネタもある。
「大相撲」の横綱「貴乃花」。13戦全勝で迎えた14日目に右ヒザを大けがをしたが、千秋楽も強行出場しての逆転優勝。「痛みに耐えてよく頑張った。感動した。」という小泉元首相の名台詞も有名になった。
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