問題は「聞かれたこと」に対応させて「答える」
「うみのかくれんぼ」は誰が書いた?
光村一年国語の最後に出てくる説明文「うみのかくれんぼ」は、筆者名が書かれていない。これは光村図書の編集者が書いた教材と言うことを示しているのだが、意外とそうしたことを知らない先生が多い。
「教科書に載るような文なのだから、すばらしいライターが様々なことを考えて書いたに違いない」と考える人が多いだろう。
しかしこの説明文。1回読むと分かると思うのだが、書いてあることがすっと頭に入ってこない。たとえば、(※一文毎に番号を付す。)
①うみには、いきものがかくれています。
②なにが、どのようにかくれているのでしょうか。
①は読めば分かる。そのまま素直に読めばいい。
②は、次のように二文に分けることができる。
A なにが、かくれているのでしょうか。
B どのように、かくれているのでしょうか。
だからこのあとの文は、AとBの二つについて書かれているのだな、と読者は思う。では、そうなっているのか?
③はまぐりが、すなのなかにかくれています。
なるほど。よって
A「なにが」かくれているのでしょうか?
→「はまぐりがかくれています」
とそっくりそのまま抜き書きをして答えればいい。
ノートに「①はまぐり」だけ書かせてもいいだろう。
B「どのように」かくれているのでしょうか?
の答えは書いてありますか?
「書いてない」が正解だが、中には「すなのなかに」と答える子もいるかも知れない。
こういう場合、
「惜しい。ここは難しい。よくまちがえるところ。『すなのなかに』というのは、「どこに」かくれているのでしょうか?場所をおたずねする問題だったらマルなんです。」
とあっさり教師が引き取って先に進むほうが、他の子どもに指摘させるよりもまちがえた子のダメージが小さくて済む。
④はまぐりは、大きくて、つよいあしをもっています。
これは、B「どのようにかくれている」と関係ないことが書かれている。「④の文で問題を作りなさい」というようなこともできなくはないが、大混乱するだけなのでお勧めできない。やるなら、「はまぐりは、大きくて、つよい何をもっていますか?」と聞いてやり、「あし」と答えさせた後、「はまぐりのあし」が貝から出てくる映像を見せるという手がある。
⑤すなのなかにあしをのばして、すばやくもぐってかくれます。
問題はこの文だ。
B「どのようにかくれているのでしょうか」という問いの答えは、④にはかあkれていないのだから、残っている⑤に書いてあるはずだ。
そしてこの文の文末が「かくれています」と書いてあるのなら、その前に書いてある言葉が答えだとすぐにわかる。
しかしそうではなく、「かくれます」と書かれている。
なぜ「かくれています」と書かないのだろう?
「こうした説明文は世の中にありふれているから、そのような文から答えを探し出す必要がある」
それも一理あるが、一年生の説明文だと言うことを考えれば、問いと答えが正対するように書くべきだ。よって、そのように書き直しをさせてから答えさせる。
「そんなことをしていいのか?」
構わない。説明文の読解学習で大事なのは、「答えが書いてある箇所を文中から見つけ、正しく抜き書きする力」を身に付けさせることにあるからだ。
もし心配なら①〜⑤の文を短冊などにあらかじめ書いておき、掲示する。ただし⑤は「かくれています」と書いた短冊の他に、「かくれます」と書いた二つを用意し、最初は前者の方を掲示しておく。
そうすると、Aの問いに対する答えは③の短冊の「はまぐり」を丸囲みしてやれば確定する。
Bの問いに対する答えは当然⑤の短冊に注目するだろうから、そっくりそのまま抜き書きをすればいいことを学習した後、「かくれます」と書かれた方の短冊を提示。「実は教科書の文は、「かくれます」になっているんですが、気が付いてましたか?」と問うと「知ってたよ」と言う子もいるだろう。
「「かくれます」と書かれていた場合、そのまま抜き書きするとおかしな感じがしない?」
これも聞いてみる。「おかしい」というだろう。そこでこういう場合は、書き直しをして答えるのが正しいことを伝える。
問題は聞かれたことに対応させて答える
すなわち
「すなのなかにあしをのばして、すばやくもぐってかくれます。」
→「すなのなかにあしをのばして、すばやくもぐってかくれています。」
と文末を書き直し(リライト)して書かせるわけだ。
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