道徳授業の定石化 「手品師」(教出6年)令和もこの教材で授業をするのは「誠実」か?
令和にもあの「手品師」が5社で登場
「手品師」は、道徳授業で副読本が使用されていた1989年に、『「道徳」授業に何が出来るか』宇佐美寛著(明治図書)で批判された事でも知られている有名な資料だ。この資料は、道徳教育の第一人者として役割演技の重要性を訴えた元東京都小学校校長(のちに玉川大講師)の江橋照雄が、徳目「誠実」の授業用に書いた作品。令和になった今も、道徳教科書を出版する5社(東書、教出、日文、光村、光文)で扱われている。
指導案も数多く見かける。よくある展開はこんな感じだ。
【学習課題】うそやごまかしをしないで誠実に生活するためには、どんな考えが大切か。
○「そうか……。」と手品師が迷ったのはなぜか。
・自分がいかないと男の子が悲しむから
○手品師は大劇場に行くべきか、男の子のところに行くべきか、話し合いましょう。
・有名になってから男の子に見せればいいから、大劇場に行くべきだと思う。
・男と子と先に約束したから男と子のところに行くべきだと思う。男の子を悲しませてはいけない。
○手品師は迷いながらもはっきりと断ったのは、どんな考えからか。
・自分の心にうそをつきたくない。
・お金よりも男の子の気持ちを選びたい。
○手品師は、男の子の前で手品を見せているとき、どんな気持ちだったでしょう。
・男の子が笑顔になって、くいはない。
・約束を守って気持ちいい。
自分にうそをつかず、正直にせい実に行動しようと思うことが大切。そうすると気持ちがすっきりし、信用される。
ここでは批判は置いておき、「定石展開」での組立てを考えてみる。
定石展開1⃣ 「登場人物」「会話文」「人物評価」の確定
登場人物にナンバリング。手品師=青丸。男の子=赤丸 手品師の友人=黄色丸
発問1 誰がいい人か?→手品師 男の子を元気づけるために手品を披露した。
発問2 誰に問題があるか?→手品師 仲の良い友人からの大劇場出演の誘いがあり、暇でなくなったにも関わらず、誘いを断り、お金にならない子どもとの約束を優先した。
定石展開2⃣ 変換点の検討
発問3 どこから考えが変わったか?→考えは変わっていない。仲の良い友人から電話がかかってきて「迷いに迷った」ものの、男の子との約束を優先するという考えのままだった。
発問4 変わる(迷う)前(の手品師)はどういう状態?→やさしい。親切。子ども思い。
発問5 後はどういう状態?→迷った末に、子どもとの約束を守るという考えは変わらなかった。
発問6 迷った末に約束を守った手品師の事を何と言えばいいか?→「まじめ」「誠実」「がんこ」「信念」の人 ※子どもたちから出てこない場合は「誠実」=まじめで真心がある事、という言葉がある事を知らせる。
定石展開3⃣ 自分に返す
発問7 今の自分は、前(やさしい)か後(誠実)か?→※子どもによって反応が異なる。
発問8 自分が手品師なら、どうするか?→大劇場へ行く。子どもとの約束を守る。
発問9 似たような話を知らないか。聞いたことはないか?→※学級の実態による。出てきたらじっくりと話を聞く。
最後の選択は子どもに委ねるのがいい。
最後の講話も悩む。この話の舞台設定は、貧しい手品師でも電話を持てるようになった頃のヨーロッパなので、同じくヨーロッパで昔から言われていたことわざ「幸運の女神には前髪しかない」すなわち「チャンスはやって来たその瞬間に掴まなくてはならない」という教訓がある事を紹介。「前髪を取るか?子どもを取るか?」オープンエンドで終えるのもいいのかもしれない。
また、手品師は子どもに対して「誠実」だが、自分の人生に対して「誠実」に向き合っていると言えるのか?についても時間があるのであれば問いかけてみたい。自分の生活や人生がかかっている大舞台出演のチャンスを仲の良い友人から受けたのにも関わらず、理由も告げずにキャンセルするのは、友人に対して誠実な行動と言えるのか?
「自分にうそをつかず、正直にせい実に行動しようと思うことが大切。そうすると気持ちがすっきりし、信用される。」というまとめを押しつけないのであれば、「誠実とは?」について考えるのに適した教材なのかも知れない。
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