道徳授業の定石化 「かくしたボール」(東書2年)教科書の主発問で授業するのは?

2025年2月6日

教科書の発問はおもしろいか?

教科書の物語を読み聞かせる。

「6年生の言葉を聞いてはっとした『ぼく』は、どんなことを考えたのでしょう。」

最後に書いてある発問を先に読む子もいる。

「『はっとした』っ、てどこに書いてあるんだ?」

こういう問題は国語の読み取りと同じ。なので、その言葉が書いてある所を探せばいい。あった!本文の最後に書いてある。その直前には、昼休み、「ぼく」が植え込みに隠しておいたボールを取りに行こうとしたら、六年生が、その植え込みの中をのぞいていた場面。会話文が4つ書かれている。

①「ボールをかくす子がいるなんて、ほんとうかな。」
②「どうしてかくすのかな。みんなのものなのに、こまっちゃうね。」
③「あっ、こんなところにあった。やっぱりかくしたのかな。」
④「かたづけておこうね。」

この4つの会話を聞いて「はっとした『ぼく』」は、「どんなことをかんがえたのでしょう。」ということなのだが、そんなこと、問われても困る。はっとした場面でこのお話は終わっているのだ。「どんなことをかんがえた」かは、書かれていない。書かれてないことは分からない。ASD傾向の強い子どもなら、「わかんない!」とキレる事になる。

はっきり言おう。教科書の発問は、つまらない!
ちなみに、教科書会社のWEBに載っている指導案には概ね次のような流れが紹介されている。

「みんなが使うものには、使い方にきまりがあります。それをまもらないときがあるのはなぜ。」
・チャイムがなってすぐもどらなくちゃいけないから。
・いそいでいるから。
・他にもまもっていないから。
【学習課題】やくそくやきまりをすすんでまもるには、どんな気持ちが大切でしょう。
〜教材視聴〜
○「ぼく」がボールをかくしたのは、どんなことを考えたからでしょう。
・使いやすいボールを使いたい。
・かくしておけばだいじょうぶ。
・使ってから返しておけばいい。
○6年生のことばにはっとした「ぼく」は、どんなことに気づいたのでしょう。
・ひとりじめしたらいけなかった。
・自分のボールにしたらいけなかった。
・きまりを守らなくてはいけなかった。
○みんながやくそくやきまりを守ると、どんなよいことがあるでしょう。
・みんなが気持ちよくなる。
・みんながこまらなくなる。
・気持ちよく使える。
まとめ「みんなのことを考えて、みんながこまらないようにまもろうと思うことが大切。そうすると、みんなが気持ちよく生活できる」

授業冒頭で「今の自分」を見つめさせ、そこから『学習課題』が設定され、教材を視聴し、教材の読解を通して『答え』を見つける」といういわゆる「問題解決型」の授業になっている。しかし、教師の求める答えを忖度し、発表できる優等生が活躍する授業イメージをどうしても抱いてしまう。こんな授業ができる学級が日本全国どれくらいあるのだろうか?それは果たして「いい授業」なのだろうか?わくわくする「面白い授業」なのだろうか?
「わざとらしい」問いに、「押しつけがましい」答えを求められ、優等生だけが活躍する「つまらない」授業なのではなかろうか?

定石発問・展開で授業する

定石発問・展開で進める道徳授業は毎回、ほぼ同じ展開で授業が進んでいく。発問もほぼ同じ。わざとらしさや押しつけがましさはない。問いがはっきりしているので、教材の読み聞かせは、答えを探しながら安心して聞くことができる。

「登場人物」を確定する作業を終えたら、登場人物を分類する三つの発問。

誰がいい人ですか?

「誰がだめですか?」② 何が問題ですか?」③)

①または②のどちらかで問うのが定石。この話の場合、「いい人」ではなく、「だめ」な人が問題になっているから、②または③で問いかける。

当然、「ぼく」がだめな人だ。「理由を言える人?」と聞けば、かなりの子が挙手し、「ボールを隠している」「『決められた場所に返しましょう」と書いてあるのに、返していない」ことを挙げるだろう。

次は、話の「変換点」を見つける発問。

どこから変わったんですか?」④

「ぼく」はボール蹴りをしていたが、休み時間が終わるまでは問題となるようなことはしていない。変わったのは、「でも、こんないいボール…」という箇所からだ。これも簡単に見つかる。問えば多くの子が手を挙げて答えることができるだろう。

続けて「道徳的価値」を焦点化する問い。

前はどういう状態(ですか?)

後ろはどういう状態ですか?」⑥

⑤は答え方が難しい。そう思ったなら
「なぜボールを隠したの?」
と補助発問を出してもいいだろう。
「いいボールだった」
から隠したわけだ。
「じゃあ、そういう『ぼく』の事は、何て言ったらいいの?」
と尋ねてやれば、
「自分勝手」
に近い言葉が出てくるだろう。

⑥も「はっとした」後のことは書かれていないので、
「はっとしたあとは、どういう状態になるといいですか?」
と問えば、
「ボールはきちんと決められた場所に返す」
という、ルールが書かれた部分を指摘して答えてくれるはず。
「なぜ?」
と問えば、
「ルールだから。」

教材の題名横に書いてある「みんながつかうもの」という言葉を付け加えて、
「みんながつかうものだからルールを守って使うといい、ってことだね。」
とまとめてやれば、書いてないことを無理やり想像させて言わせるような押しつけがましい授業よりもずっと良心的な授業なのではなかろうか?

 

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